IT全般/EXCELでエンドユーザコンピューティングする場合は仕様書を作成しよう
いわゆる情報システム部門以外の人たちが、EXCELなどを使って自分たちの業務を効率化することをエンドユーザコンピューティングと呼びます。
エンドユーザコンピューティングは、現場の業務にあわせて処理内容を柔軟に変更することができるので、外部の業者に委託したり情報システム部門に作成してもらうのに比べて手軽で便利な反面、気をつけなければならないことがいくつかあります。
当然のことながら、内部統制によってエンドユーザコンピューティングが管理や制限されている業務では、ルールにしたがった運用が必要となりますが、そういう固い話はおいといて、もっと一般的な問題のことです。
たとえば・・・
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担当者が異動でいなくなったら、その人が使っていたEXCELファイルの使い方が分からなくて業務が滞った。
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変更を加えたいのだが、どこを修正すればよいか分からない(自分が作成したファイルですら、数ヶ月たつと分からなくなる)※1
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沢山のEXCELファイルが存在するが、どのファイルが業務に使われていて、どのファイルがいらないのか分からない。
このような問題を解決するため、それぞれのEXCELファイルについての説明書を記述しておくことをお勧めします。
書いておくべき項目は・・・
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このファイルはどのような業務においてどのようなことを目的として作成されたものか
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このファイルの使い方、操作方法(どのセルに何をいれる、何を貼り付けて、どこを印刷する、変更してはいけない部分など)
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このファイルに含まれる数式あるいは処理内容についての、基本的な考え方、シートの設定内容の説明(シートの設計)
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このファイルを変更した履歴
こういうものを仕様書(あるいは設計書)と呼びます。
エンドユーザの方にとって書き方が分かりにくいのは3番だと思いますが、これをどのように書けばよいかは後述します。
まず、これらの内容をどこに記載すればいいでしょうか?
簡単な方法があります。対象とするファイルの別シートに書くのです。
記載例を下記に掲載しますが、「業務内容」「使い方」「シート説明」「変更履歴」などといったシート名でよいしょう。
※この画像をクリックすると拡大表示できます。
サンプルをダウンロードする場合は下をクリックしてください。
⇒サンプルEXCELファイルをダウンロード
この工夫は、一個人だけがやるよりも部門単位で実施するほうが効果があります。
また、このようなファイルをテンプレートとして保存し、部門内で共通に利用するのも良い方法だと思います。
さて、上記3番のシートの設計にあたる部分をどう書いたらよいのかということですが、以下のような考え方で書きましょう。
まず、このシートで実現すべき機能を重要なものから順に列挙します。たとえば・・・
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売り上げデータの中から当月分(請求済み、未請求含む)を得意先別、商品コード別に集計する
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売上総利益=売上金額-仕入金額-期初在庫金額+期末在庫金額で求める
次にEXCELに設定するために必要な考え方(設定内容)を書きます。たとえば・・・
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請求済みと未請求は別シートになっているので、1つにあわせる。
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集計はピボットテーブル機能を利用する。
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商品コードから商品名をVLOOKUPで参照する。
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隠しセルになっているC列で純利益を計算する。
(マクロを利用している場合は、マクロの中にコメントで処理内容を記載する方法でもよいのですが、大まかな動作はここに記載しましょう)
さらに、注意点や特に工夫したことがあれば追記します。たとえば・・・
作成者自身がずっと後になってもこのファイルを修正できるように、という気持ちで、設定の意味やなぜそのようにしたのかといった「意図や理由」をできるだけ沢山書くようにしましょう。
最後に、最も大切なことをですが、
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これらの説明シートは、シートの設定内容を変更したら必ずそれにあわせて修正してください。
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そして同時に変更履歴を記入してください。
このルールが守られないと、結局間違った情報が記載されていることになり、後々トラブルの原因となります。
組織によっては、これらが守らなれていないファイルを共有フォルダにアップロードしてはいけないというルールを作って、定期的に管理者がチェックを行い、作成者に注意するという運用を行うことも有効でしょう。
※1)世の中には既存のEXCELのシートを分析して設計書を作り出してくれるソフトウェア(リバースエンジニアリングツール)もありますが、機械的にセル間の参照や数式を表示されても設定の意味が分からず、理解の役に立たないということになりがちです。なぜそのようなセル参照を設定したのかという意図が重要なのです。(もちろんそのようなツールも局面によっては有用です。営業妨害ではありませんので、念のため)
K.M. 2010/02/06
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